清純派のお嬢様女優として順調にキャリアを重ねていた松坂慶子に、日本中が息を呑む劇的な転機が訪れたのは1979年の主演ドラマ『水中花』(TBS系)でした。
自ら歌った主題歌「愛の水中花」の大ヒット(シングル売上約35万枚)とともに披露されたのは、黒のレースをあしらった妖艶なバニーガール姿。豊満でありながら引き締まったプロポーション、網タイツから伸びるしなやかな脚線美は、お茶の間に強烈な衝撃を与えました。後に本人が手記やテレビの回想インタビューで「当時は恥ずかしさもありましたが、役になりきることで殻を破ることができた」と語っている通り、この大胆なイメージチェンジが彼女のパブリックイメージを「国民的清純派」から「日本一のセックスシンボル」へと一気に押し上げました。
そして1982年、彼女の映画代表作として金字塔を打ち立てたのが深作欣二監督の名作『蒲田行進曲』です。落ち目の大部屋俳優・ヤス(平田満)と、スター俳優・銀四郎(風間杜夫)の間で揺れ動く落ちぶれた銀幕女優「小夏」役を熱演。妊娠中の身でありながら階段落ちの現場に立ち会う壮絶なクライマックスと、哀愁と母性、そして息を呑むような美しさをスクリーンに焼き付けました。
この演技によって松坂は、第6回日本アカデミー賞最優秀主演女優賞をはじめとする国内主要映画賞を独占。『蒲田行進曲』で見せた美しさは、単なる外見の造形を超え、一人の女性の情念と生命力が宿った伝説のビジュアルとして映画史に刻まれています。