危機モデル 看護過程を的確に展開するためには、各段階の心理特性に即したアセスメントと目標設定、ケアの実践が不可欠です。以下に、脳卒中による左片麻痺を呈した50代男性のフィンクの危機モデル 事例をもとにしたフィンクの危機モデル 看護計画の展開例を提示します。
1. 衝撃期における看護師の関わりとケアのポイント
告知直後で混乱している時期は、情報提供を最小限に留め、患者の安全確保と不安の軽減を最優先します。
- 看護目標:安心できる環境で過ごし、心理的動揺が身体的悪化に繋がらない。
- 観察計画(O-P):バイタルサインの変動、表情・言動の混乱度合い、睡眠状況。
- 援助計画(T-P):静かで刺激の少ない環境を整える。側に付き添い、沈黙を共有する。
- 教育計画(E-P):一度に大量の病状説明を行わず、患者の質問に対して短く平易に答える。
2. 防御的退行期における看護師の関わりとケアのポイント
「自分は歩けるようになるからリハビリは不要だ」と過剰な期待や否認を示す時期です。この防衛行動を無理に論破してはなりません。
- 看護目標:現実逃避の感情を否定されず、治療関係が維持される。
- 観察計画(O-P):否認の表出内容、危険行動(無理な単独歩行など)の有無。
- 援助計画(T-P):患者の訴えを受け止めつつ、転倒などの身体的危険を確実に防止する。防衛機制を無理に崩さない。
- 教育計画(E-P):障害の確定的な話は避け、現在の治療や安静の必要性に絞って説明する。
3. 承認期における看護師の関わりとケアのポイント
「もう二度と元の体には戻らない」と気付き、強い絶望感や怒りを示す時期です。傾聴と受容の姿勢が最も試されます。
- 看護目標:辛い感情を安心して表出でき、孤立感を深めない。
- 観察計画(O-P):抑うつ傾向、食欲低下、自責・他責の言動、希死念慮の兆候。
- 援助計画(T-P):怒りや涙をありのままに受け止める。「お辛いですね」と共感し、安易な励まし(「頑張って」等)を避ける。
- 教育計画(E-P):感情を表出することは自然な回復過程であると伝え、家族にも同様の関わりを依頼する。
4. 適応期における看護師の関わりとケアのポイント
現実を受け入れ、残存機能を活かした生活に向けて意欲を見せ始める時期です。
- 看護目標:新たな自己像を受け入れ、リハビリや社会復帰に主体的に取り組むことができる。
- 観察計画(O-P):リハビリへの意欲、自己効力感の向上度合い、退院後の生活設計への関心。
- 援助計画(T-P):小さな達成感を積み重ねられるよう具体的な成功体験を共有する。多職種(理学療法士・MSW等)と連携する。
- 教育計画(E-P):社会資源(身体障害者手帳、介護保険制度等)の活用法や生活の工夫を具体的に指導する。