サイフォニング現象は決して特殊な実験室だけの話ではなく、私たちが日々生活する住居のいたるところで予期せぬ実害をもたらしています。住宅設備の現場調査で報告される主なトラブル事例は次の3つに集約されます。
第1に、洗濯機の給排水における水漏れと注水不良です。ドラム式や全自動洗濯機において、排水ホースの先端が床の排水口深くまで差し込まれすぎて水封の中に浸かっていたり、排水管の勾配が不適切であったりする場合に発生します。洗濯槽に水をためようとしても、排水ホース内の負圧によって給水された水がそのまま排水口へと吸い出され続け、「注水エラーが頻発する」「水道代が跳ね上がる」「洗濯パンから水が溢れ出して階下漏水に至る」という深刻な被害を招きます。
第2に、トイレの封水切れ(破封)と悪臭・害虫の侵入です。便器の底には下水管からの悪臭や硫化水素などの有毒ガス、害虫を防ぐために一定量の水(封水・トラップ)がたまっています。しかし、集合住宅などで上階の住人が一気に大量の排水を流した際、共用排水縦管内の気圧が急激な負圧状態となり、自室のトイレの封水まで一気に吸い出してしまう現象(誘導サイフォン作用)が発生します。また、便器自体の勢いある排水によって自らの封水を引き込んでしまう自己サイフォン作用も、構造上の重大な弱点となり得ます。
第3に、エアコンのドレンホースからの逆流と異音トラブルです。高気密住宅において換気扇を強運転した際、室内外の気圧差によってドレンホース(排水管)から外気が吸い上げられ、内部にたまっていた結露水がサイフォニング作用で逆流し、室内機から水が吹き出したり「ポコポコ」という不気味な吸引音を鳴らし続けたりする事例が頻発しています。