「ご自愛ください」をそのまま目上の相手に使用する際、もう一つ注意すべき文法上の罠があります。語尾の「ください」は「くれ」の尊敬語であり、文法的には相手に対する指示・依頼(命令形)の性質を孕んでいます。そのため、極めて格式を重んじる取引先や経営層に対して「ご自愛ください」とだけ書くと、人によっては「指示された」と感じる懸念があります。
目上の方に対して敬意を十全に表現する場合は、文末を依頼や祈念の形へ昇格させるのがビジネスマナーの定石です。例えば、「ご自愛くださいますようお願い申し上げます」や「ご自愛のほど心よりお祈り申し上げます」といった言い回しに切り替えることで、丁寧さと品格が格段に向上します。
また、メールの文頭や結びにおいて、季節の挨拶と有機的に組み合わせることで、定型文ではない洗練された印象を演出できます。
- 春(3月〜4月):「寒暖定まらぬ折、体調を崩されませんようご自愛専一にお過ごしください」
- 夏(7月〜8月):「猛暑の折、どうぞ熱中症などにはお気をつけてご自愛くださいませ」
- 秋(9月〜10月):「朝夕はめっきり冷え込んでまいりました。何卒お体を大切になさってください」
- 冬(12月〜2月):「寒さ一段と厳しくなる季節柄、風邪など召されませぬようご自愛のほどお祈り申し上げます」