現在流通している『トムとジェリー キャラクター図鑑』などの公式解説書を読むと、タフィーはほぼ例外なく「ジェリーの甥(おい)」と説明されています。ジェリーを「おじさん」と慕い、その後ろをちょこちょこと追いかける姿は、作品における微笑ましい名場面のひとつです。
しかし、初登場エピソードである短編映画第24作『捨てねずみ(原題:The Milky Waif、1946年)』を観ると、そこには驚くべきドラマが描かれています。物語の冒頭、雪が吹きすさぶ寒い夜、ジェリーの家の前に小さなバスケットが置かれます。その中に入っていたのが、おむつをつけた小さな灰色のネズミでした。添えられた手紙には、こう記されていたのです。
「親のいないこの子をどうか養ってください。いつもお腹を空かせており、ミルクが大好きです」
つまり、当初のタフィー(ニブルス)はジェリーと血のつながった甥ではなく、行き場を失って託された「捨て子」でした。ジェリー自身も最初は突然の厄介者に戸惑い、追い出そうと試みますが、ミルクを求めてトムのミルク皿へ無謀に突進していく赤ん坊を見捨てることはできず、命がけでトムから守り抜くことになります。
その後、作品がシリーズ化されるにつれて「身元不明の捨て子」という設定はあまりにシビアであると受け止められたのか、1950年代以降のエピソードやコミックでは「ジェリーの姉(あるいは妹)の子=甥っ子」という血縁関係へと自然に書き換えられていきました。過酷な現実を背景にした孤児の保護劇から、面倒見のいい叔父とやんちゃな甥という普遍的なファミリーコメディへと洗練されていったプロセスが伺えます。