街宣車がうるさいのに警察が動かない真相|法規制の壁と110番通報術

街宣車がうるさいのに警察が動かない真相|法規制の壁と110番通報術

街宣車がうるさいのに警察が動かない真相|法規制の壁と110番通報術の全体像を詳しく解説してご紹介します。

街宣車がどれほど耐え難い大音量を発していても、警察官がその場でドライバーを引きずり出して連行することは滅多にありません。市民から見れば「警察の職務怠慢」に映るこの光景の裏には、警察組織が勝手に踏み越えられない3つの強固な法的制約が存在します。

1. 憲法第21条「表現の自由」という司法の絶対原則

日本国憲法第21条は、集会・結社及び言論、出版その他一切の「表現の自由」を保障しています。過去の最高裁判所判例においても、政治的主張を伴う街頭宣伝活動は手厚い保護対象と位置づけられてきました。

警察という公権力が、発言の内容や思想信条を理由に活動を一方的に停止させることは、憲法違反(検閲や恣意的な弾圧)のそしりを免れません。どれほど過激な軍歌であっても、市民感情として不快極まりない主張であっても、それが「政治的言論」の体裁を取っている限り、警察は極めて慎重な対応を強いられます。

2. 拡声機暴騒音規制条例における「手続きの壁」と測定基準

街宣車の爆音を取り締まる実定法として、各都道府県が制定している「拡声機による暴騒音の規制に関する条例(通称:拡声機暴騒音規制条例)」があります。しかし、この条例を根拠に即時摘発することは実務上きわめて困難です。

東京都の条例を例に取ると、規制対象となる暴騒音の基準は「拡声機から10メートル離れた地点で85デシベル(dB)を超えるもの」などと厳密に数値化されています。警察が摘発するためには、所定の公認騒音計を用い、定められた測定方法に則って基準超過の証拠を押さえなければなりません。

さらに法的手続きとして、「測定 → 警告 → 中止命令 → 命令違反による摘発」という段階を踏む必要があります。街宣車の活動員側もこの法律の抜け穴を熟知しており、警察官が騒音計を構えると音量をわずかに下げ、警察が立ち去ると再びボリュームを上げるという「いたちごっこ」を意図的に繰り返すのです。

3. 道路交通法と道路使用許可のすり抜け

「道路を勝手に大音量で走っているのだから道路交通法違反で捕まえられないのか」という疑問もよく聞かれます。しかし、道路交通法第77条に基づく「道路使用許可」が必要となるのは、特定の場所に固定して人だかりを作ったり、パレード行進を行ったりする場合です。

車両が法定速度の範囲内で「ただ道路を通行(走行)している状態」である限り、道路使用許可は法的に不要と解釈されます。駐停車禁止場所に居座れば駐車違反等で取り締まる余地がありますが、信号待ち以外では低速で走行し続ける街宣車に対し、道路交通法のみで走行そのものを差し止める決定打はありません。

阿部 裕樹
著者

阿部 裕樹

マネー知識やキャリア形成に役立つノウハウを、初心者にも分かりやすく解説するのが得意です。