1983年に第1作がスタートした『金曜日の妻たちへ』は、日本のホームドラマの概念を根底から覆しました。それまでのテレビドラマが描いてきた「耐え忍ぶ妻」「家族の団らん」というステレオタイプを解体し、自立した大人の男女が抱える孤独や性、満たされない承認欲求を白日の下に晒したからです。
最大の仕掛け人となったのは、名脚本家・鎌田敏夫です。鎌田氏が紡ぎ出す会話劇は、軽妙洒脱でありながら心の奥底に潜む本音を容赦なくえぐり出しました。友人同士のホームパーティーでワインを傾け、表面的には仲睦まじい夫婦を演じながら、視線の交差ひとつで禁断の関係を匂わせる演出は、当時の視聴者に強烈な背徳感と憧れを同時に植え付けました。
この作品が契機となり、メディアはこぞって「不倫ブーム」を特集。単なるスキャンダル消費ではなく、主婦という枠組みに閉じ込められていた女性たちのアイデンティティクライシスを映し出す鏡として、社会学的な議論へと発展していきました。