いまや全国区の知名度を誇る「金沢カレー」ですが、その起源を巡る系譜は、1960年代初頭の名門「レストラン・ニューカナザワ」の厨房にまで遡ります。当時の料理長やチーフコックたちが独立し、それぞれが独自の解釈で大衆向けのカレーを考案したことが群雄割拠の幕開けとなりました。その中心人物の一人が、キッチンユキの創業者である故・宮島幸雄氏です。屋号の「ユキ」は、幸雄氏のファーストネームから採られたものです。
他チェーンがスパイシーさやドロッとした粘度をカツとの相性に特化させていくなかで、洋食のプロフェッショナルであった宮島氏が追求したのは、デミグラスソースの奥深いコクとカレーの融合でした。これが「キッチンユキ金沢ブラック真相」の核心です。小麦粉とラードを平釜で極限まで焦がさず炒め上げ、じっくりと時間をかけて炒めた玉ねぎの甘味、厳選された牛や豚のブイヨン、そして秘伝のスパイスを何日もかけて煮込み・熟成させる。その過酷な工程によって、着色料に頼らない自然な「黒褐色」の艶が生まれます。
苦味の紙一重手前にある芳醇なロースト香と、舌の上に広がる濃厚な甘み・旨み、そして遅れてやってくる穏やかな辛さ。この多重奏のような味わいこそが、一般的なカレースタンドとは一線を画す「洋食屋のブラックカレー」として、60年近く王座に君臨し続ける揺るぎない根拠となっています。