同潤会とは何か?震災復興から表参道ヒルズへ続く近代集合住宅の真相

同潤会とは何か?震災復興から表参道ヒルズへ続く近代集合住宅の真相

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かつての同潤会アパートの暮らしとは、実際にはどのようなものだったのでしょうか。当時の記録写真や居住者の手記、オーラルヒストリーから浮かび上がるのは、映画のワンシーンのような温もりと、日常の泥臭い苦闘が入り混じったリアルな現場の姿です。

代官山アパートメントに半世紀以上暮らした元住民の女性は、かつての特番インタビューや回想録で次のように述懐しています。

「春になると中庭の緑が一斉に芽吹き、窓を開けると鳥のさえずりが聞こえました。鍵をかけずに隣へ醤油を借りに行ったり、夕暮れ時にはどこからともなくカレーの匂いが漂ってきたり。あの頃の同潤会には、ひとつの大きな家族のようなぬくもりがありました」

1980年代から90年代にかけては、そのレトロで独特な佇まいに魅せられた若手クリエイターやギャラリー、古着屋が青山アパートメントの空き室に次々と入居しました。「原宿・表参道のカルチャー発信基地」としてのブランドを確立したのもこの時期です。

しかし、その一方で現場の住民たちは、日常的な設備の限界と戦い続けていました。SNSやネット上の掲示板でも、当時を知る関係者から生々しい実態が明かされています。

「雨が降ると壁から雨水が染み出して畳がカビだらけになった」
「冬場の隙間風が猛烈で、風呂のない部屋では真冬の銭湯通いが命がけだった」
「外見はおしゃれなツタに見えるが、ツタの根がコンクリートのひび割れを広げ、無数の虫が部屋に入り込む原因になっていた」

ネット上では「美しきヴィンテージ建築を壊した悪政」と短絡的に語られることもありますが、実際に暮らしていた人々の切実な生活実態を無視して保存を語ることはできなかったのです。

松本 悠斗
著者

松本 悠斗

マネー知識やキャリア形成に役立つノウハウを、初心者にも分かりやすく解説するのが得意です。