1946年(昭和21年)の創業以来、良質な白身魚のすり身と職人の伝統技を守り抜いてきた株式会社ハトヤ。姫路を代表する名門企業が法的手続きへと追い込まれた背景には、一過性の不況にとどまらない根深い構造的リスクが存在していました。
東京商工リサーチおよび帝国データバンクの破産速報によると、株式会社ハトヤは2021年11月17日付で神戸地方裁判所姫路支部より破産手続き開始決定を受けました。負債総額は約5億5,000万円。地元姫路の経済界では「あのハトヤが」と絶句する声が広がりました。
ハトヤ蒲鉾の倒産理由を紐解くと、以下の3つの致命的要因が重なり合った結果であることが分かります。
第1に、原材料およびエネルギーコストの歴史的急騰です。主原料であるスケソウダラやイトヨリダイなどの冷凍すり身は、世界的な水産物需要の高まりと円安進行によって仕入れ価格が跳ね上がりました。さらに蒲鉾の蒸し上げやフライ工程に不可欠な重油・電気代、包装フィルムの資材費が利益を極限まで圧迫していました。
第2に、冠婚葬祭・中元歳暮市場の急激な縮小です。ハトヤは高度経済成長期からバブル期にかけ、婚礼用の細工蒲鉾や企業・個人の高級贈答用ギフトで高い利益率を確保していました。しかし、儀礼的な贈答文化の衰退に伴い、高付加価値商品の売上は年々減少。普段使いの廉価なスーパー向け商品へシフトせざるを得ず、薄利多売の消耗戦に巻き込まれていきました。
そして決定打となった第3の要因が、2020年からの行動制限による観光客の消失でした。新幹線の主要停車駅である姫路駅直結の商業施設やおみやげ館、姫路城周辺の観光ルートに構えていた直営店は、旅行者の激減によって軒並み壊滅的な打撃を受けました。資金繰りが限界に達した2021年秋、事業継続を断念するに至ったのがハトヤ蒲鉾の閉店の経緯の冷徹な全貌です。