水槽内で見つけた卵をそのまま放置してはならない最大の理由は、親魚による捕食対策が自然界とは比較にならないほど閉鎖空間で切迫しているためです。魚類には「動くものや口に入るサイズの有機物はすべて餌とみなす」という本能的な摂食行動がプログラムされています。親メダカにとって、自らが産み落とした卵であっても、目の前を漂う高栄養なタンパク質源に過ぎません。
アクアリウムの取材現場でベテランブリーダーが口を揃えるのは、「親メダカは産卵直後から自分の卵を狙っている」という冷徹な事実です。特に朝方の産卵行動が終わった後、水草や産卵床に付着した卵は格好のターゲットになります。十分な隠れ場所がある過密でないビオトープであっても、親魚水槽内で無事に孵化まで生き残る確率は10%未満にまで落ち込むのが飼育現場の定説です。
命を確実に残すためのメダカ卵の隔離方法は、卵を見つけ次第、親魚の手の届かない別の容器へ物理的に移動させることです。専用の隔離ネットを親水槽内に浮かべる方法もありますが、親魚が網越しにつついて卵を吸い出してしまう事故が多発しています。そのため、100円ショップで手に入る小型の浅型タッパーやプラスチックケースを「孵化専用容器」として別個に用意するのが最も確実な防衛策となります。