水没シーンの異質さから派生し、ジブリ史上屈指の有名都市伝説となったのが「ポニョ=死後の世界(全員死亡説)」です。この説を支持する人々は、劇中に散りばめられた数々の描写を「死の暗示」として解釈しています。
最も頻繁に引き合いに出されるのが、リサが勤務するデイケアサービスセンター「ひまわりの家」の車椅子の老人たちです。津波が去った後、水没した海底にあるドームの中で、車椅子生活だったトキさんたちが立ち上がり、宗介を抱きしめて元気に走り回っています。この描写についてネット上では、「足が動かないはずの老人たちが自由に走れているのは、すでに肉体を離れて天国(あの世)へ行ったからだ」と解釈されました。
さらに、宗介とポニョがリサを探しに向かう途中で通る「緑のトンネル」の描写も都市伝説に拍車をかけました。トンネルの入り口には古い地蔵が並び、ポニョは中に入ることを極端に嫌がります。そしてトンネルを通過する最中、ポニョは魔法の力を失って魚の姿へと戻り、眠りに落ちてしまいます。民俗学においてトンネルは「此岸(現世)」と「彼岸(あの世)」を分かつ結界(黄泉比良坂のような境界)の象徴とされることが多く、「トンネルを抜けた先は完全なる死者の国である」という説がまことしやかに語られるようになりました。
道中で出会う「赤ん坊を抱いた古風な装いの夫婦」が乗る動力のない木造船も、「三途の川を渡る死者たちの小舟」ではないかと考察されています。
しかし、スタジオジブリおよび宮崎駿監督は「全員が死んでいる」というオカルト的解釈を公式に認めたことは一度もありません。後述するように、絵コンテやスタッフの公式証言において示されているのは、単純な「死後の世界オチ」などではなく、より根源的な生命観と神話の世界です。