移動中のトラブルは、通路での歩行時だけでなく、駅構内の縦移動や交通機関の車内といった過密環境でより先鋭化します。特に混雑時のキャリーケースの電車内マナーにおいては、「車輪を野放しにしない」徹底した自己管理が求められます。揺れる車内で手を離したキャリーケースが自走し、座席に座る乗客の足やすねを直撃する事故は日常茶飯事です。乗車時は必ず本体を自分の両足の間に挟み込むか、片手をトップハンドルに常に添えておく必要があります。ストッパー機能付きモデルであっても、急停車時の慣性力はロック機構をすり抜けることがあるため、物理的に身体の一部でホールドする意識を忘れてはなりません。
危険度が最も高くなるのが高低差の移動です。階段を昇り降りする際に、伸縮式のキャリーバーを伸ばしたままケースを引きずり上げたり、ガタガタと打ちつけながら下ろしたりする行為は極めて危険です。伸縮ハンドルは引いて水平移動するための強度しか持たず、垂直方向への急激な荷重変化には耐えられません。パイプの破断やロックピンの脱落により、数十キロの金属塊が階段下へ落下すれば大惨事を引き起こします。階段では伸縮バーを即座に収納し、本体上部や側面に強固に縫い付けられたキャリーケースの横持ちハンドル活用法を実践し、身体に引き寄せて手持ち運搬するのが階段での安全なキャリーケースの運び方の鉄則です。
同様に、エスカレーター利用時の正しい持ち方も徹底したルール化が必要です。エスカレーターでは以下の手順を遵守しなければ、重大な転落事故につながります。
- 昇りエスカレーター:自身の一段前のステップにキャリーケースを載せ、両手でケースと手すりを固定する。荷物が後方へ倒れてくる危険を自身の身体で遮断する配置をとる。
- 降りエスカレーター:自身の一段前のステップ(視界の前方)にケースを置き、片手でエスカレーターの手すりを握り、もう片方の手でケースのトップハンドルを真上から強く押し付け、車輪がステップの溝に安定するよう荷重をかける。
- 絶対禁止事項:自身の後方ステップにキャリーケースを置く配置。視界から外れた荷物がステップの傾斜でバランスを崩し、下方の利用者を巻き込んで転落する大事故の原因になります。