ネット上の旅行ブログやSNSでは「雨の日の伊勢志摩は絶景が見られず完全に損をする」という短絡的な声が散見されますが、これは半分正しく、半分は完全な誤解です。
確かに、横山展望台や鳥羽展望台からのオーシャンパノラマは、濃霧や雨雲に覆われると視界ゼロの白銀世界と化し、景観の価値は著しく低下します。しかし、神道や日本文化の文脈において、雨の日の伊勢神宮は古来「禊(みそぎ)の雨」と呼ばれ、最も清浄な空気が満ちる吉兆として重宝されてきました。雨滴に洗われた杉木立の深緑、濡れて黒光りする宇治橋、雨煙が漂う五十鈴川の光景は、快晴時では絶対に体験できない圧倒的な神聖さを醸し出します。
さらに、悪天候時は団体観光バスのキャンセルが相次ぐため、普段は混雑でまともに歩けない内宮の正宮前やおはらい町・おかげ横丁を、信じられないほどの静けさの中でゆっくり巡ることができるという隠れた特権があります。晴天時の「パノラマ絶景観光」から、雨天時の「文化・食の没入観光」へと頭を切り替えられるかどうかが、満足度の分水嶺となります。