ピザ生地特有の「引きのあるもちもち感」は、単に粉をこねて焼くだけでは生まれません。調理科学の観点から見ると、ピザ生地がもちもちになる理由は「グルテン網目構造の発達」と「デンプンの加熱による糊化(α化)」という2つの現象が緻密に噛み合うことで成立しています。
小麦粉に含まれる2種類のタンパク質「グリアジン(粘性を生む)」と「グルテニン(弾性を生む)」は、水を加えて物理的な力を加えることで結合し、網目状のグルテン膜を形成します。この立体的な膜がイーストから発生する炭酸ガスを内側にしっかりと抱え込み、焼成時に内部の水分を逃さず閉じ込めることで、しっとりとした弾力が保たれます。
特にイタリアの伝統的なナポリピッツァの規格を支えるナポリ風本格ピザ生地の水分量と捏ね方においては、粉の重量に対して水分量を65%〜70%と高めに設定するのが鉄則です。水分量が60%以下だと焼成時に内部の水分が飛びすぎて乾いたパンのような食感になり、逆に75%を超えると家庭での成形が極めて困難になります。手のひらの付け根で生地を押し伸ばし、向こう側から手前へ折りたたむ作業を10分から15分ほどリズミカルに繰り返すことで、気泡を均一に包み込む強靭なグルテン膜が完成します。