動物病院での急性期治療を乗り越えて「命が助かった」としても、マムシ咬傷の試練はそこで完結するわけではありません。SNSコミュニティや臨床記録には、急性期を脱した後に飼い主を襲う「組織壊死」と「後遺症」の生々しい実態が数多く記録されています。
ネット上の掲示板や闘病記録において、飼い主たちが一様に驚愕と苦悩を吐露するのが、「受傷後1週間前後から始まる患部の皮膚脱落」です。マムシ毒に含まれるプロテアーゼの強烈な細胞溶解作用によって、咬傷部周辺の皮下組織は広範囲にわたって阻血性壊死を起こします。パンパンに張っていた顔の腫れが引くにつれ、鼻先やマズルの皮膚が黒ずんで硬化し、やがてボロボロと剥がれ落ちて皮下の筋肉組織が剥き出しになるという凄絶な経過を辿るケースがあります。
ある中型犬の飼い主は当時の手記で次のように振り返っています。
「一命を取り留めて退院した3日後、愛犬のマズルの皮膚がまるで炭のように黒くなり、傷口から浸出液が止まらなくなりました。獣医師から壊死組織のデブリードマン(除去手術)が必要だと告げられた時は足がすくみました。傷口がふさがるまで毎日洗浄とガーゼ交換に通い、元のピンク色の皮膚に戻るまで2ヶ月以上の壮絶な日々でした」
また、外見上の創傷だけでなく、目に見えない後遺症のリスクも看過できません。急性期に大量のミオグロビンや赤血球破壊産物を処理した腎臓には極度の負荷がかかっており、数ヶ月〜数年後に慢性腎臓病(CKD)へと移行するリスクが存在します。退院後も定期的な血液検査(Cre, BUN, SDMA)と尿検査を継続し、内臓機能が不可逆的なダメージを負っていないかをモニタリングし続けることが、真の完治への道筋です。