では、なぜトカラ列島、とりわけ悪石島や小宝島の周辺を震源域とする群発地震がこれほど頻発するのでしょうか。その理由は、この海域特有の非常に複雑なプレート境界メカニズムにあります。
トカラ列島が位置するエリアは、ユーラシアプレートの下にフィリピン海プレートが東側から斜めに沈み込む「琉球海溝(南西諸島海溝)」の背後(バックアーク)にあたります。ここでは沈み込むプレートの動きに伴い、背後の地殻が東西に引っ張られて裂け目が広がる「沖縄トラフ」と呼ばれる背弧海盆の拡大運動が現在進行形で起きています。
この引っ張られる力(張力場)によって地殻が引き裂かれ、無数の正断層が形成されています。さらに地下深くからマグマや高温の熱水・ガスなどの流体が上昇して断層の隙間に貫入することで、岩盤の摩擦強度が低下し、比較的小規模なマグニチュード3〜5クラスの地震がドミノ倒しのように連続して発生するのです。
つまり、トカラ列島で起きているのは「地殻が東西に裂ける張力型の群発地震」であり、プレート同士が強く噛み合って限界まで歪みを溜め込むような「巨大地震の震源断層」とは、発生メカニズムそのものが根本から異なります。