「ベーキングパウダーを切らしてしまったが、重曹やドライイーストで代用できるのか」という疑問は頻繁に寄せられます。しかし、これら3者は膨らむメカニズムが科学的に全く異なります。
ベーキングパウダーは、アルカリ性の炭酸水素ナトリウム(重曹)に酸性剤(酒石酸水素カリウム等)と遮断剤(コーンスターチ)を配合した複合剤です。水分が加わった瞬間とオーブンの熱の2段階で炭酸ガスを発生させるため、どんな生地でも縦方向にふんわりと均一に膨らみ、無味無臭に仕上がります。
一方、重曹(ベーキングソーダ)は100%炭酸水素ナトリウムであり、加熱によって横方向に強く膨張します。さらにアルカリ性が残るため、生地が黄色く着色し、特有の苦味・えぐみ(塩基性の味)が出やすい性質を持ちます。
ドライイーストは化学膨張剤ではなく酵母菌という生きた微生物です。糖分をエサにして発酵し、時間をかけて炭酸ガスとアルコールを生成してパン特有の骨格を作ります。数分〜数十分で焼き上げるパウンドケーキやクッキーなどの焼き菓子にイーストを代用することは、発酵工程が必要となるため原則として不可能です。
もしベーキングパウダーの代わりに重曹を使用する場合、「ベーキングパウダーの分量の半分〜3分の1」に減らし、レモン汁やヨーグルトなどの酸性材料を加えるのが代用時の黄金比率です。重曹単体で同量を投入すると、強い苦味で食べられなくなるため厳禁です。