ヴォルデモートのビジュアルは、映画史に残る特殊メイクとVFXの融合例である。しかし、意外にも彼がメイクアップの椅子に座っていた時間は毎朝約2時間程度に過ぎなかった。子役たちの労働時間制限が厳しい現場において、ファインズのメイクだけに何時間も費やすわけにはいかなかったからだ。
眉毛を完全に消し去り、肌に青白い静脈のタトゥーシールを貼り、偽歯と鋭い指甲を装着する。そして最大のトレードマークである「蛇のような鼻」は、実在の鼻の上に目印となるトラッキング用マーカーを塗り、ポストプロダクションで1フレームずつデジタル処理によって消し去られた。
「鼻がない」という極限まで削ぎ落とされた顔面が、ファインズの目力と表情の細かなピクつきをより一層引き立てる。過度な特殊造形に頼らず、生身の皮膚感を残したことこそが、リアルで不気味な生々しさを生み出したのだ。