現代で「さすまた」と聞くと、学校や金融機関に配備されている「不審者を取り押さえる防犯器具」を連想する人が大半です。そのため、「犯人を捕まえる道具なのに、なぜ警察署ではなく消防署のマークなのか?」という誤解がネット上でも頻繁に見受けられます。
歴史資料館の学芸員や防災史の専門家による解説資料によると、江戸時代の刺股には「捕縛用」と「消火用」の2つの系統が存在していました。
武家や町奉行所が用いた捕縛用の刺股には、犯人に握り返されないよう柄や二股部分に無数の鋭いトゲが仕込まれていました。一方で、町火消が使っていた消火用の刺股は、木造家屋の梁や板壁を効率よく押し崩すため、トゲがなく頑丈な長柄構造になっていたという決定的な違いがあります。消防署の記号として残っているのは、まさにこの「街を火災から守るために家屋を押し倒した消火専用の刺股」のシルエットです。