建物を語る上で避けて通れない人物がいる。倉敷の街並み保存に生涯を捧げた名建築家、浦辺鎮太郎だ。彼が設計を手掛けたこの館は、1964年に日本建築学会賞作品として極めて高い評価を受けた。周囲の伝統的な町家や蔵屋敷をそのまま模倣するのではなく、現代的なモダニズム建築の手法を用いながら、瓦や焼き杉の風合いを見事なバランスで景観へと調和させている。
館内を歩けば、打ち放しコンクリートの力強さと、随所に配された温かみのある木組みが心地よいリズムを刻む。光と影の計算し尽くされたコントラスト。半世紀以上の歳月を経てなお色褪せない空間設計は、建築ファンのみならず、訪れるすべての旅人の心を捉えて離さない。