東雲公務員宿舎の現在と退去問題の真相|タワマン批判から裁判の結末まで

東雲公務員宿舎の現在と退去問題の真相|タワマン批判から裁判の結末まで

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完成直後、猛烈な世論の逆風に晒されていた東雲住宅の運命を一変させたのが、2011年3月11日の東日本大震災と福島第一原子力発電所事故でした。政府は完成したばかりで未入居だった東雲住宅を、災害救助法に基づく避難所として福島県からの避難者に無償提供することを電撃的に決定。最大時で数百世帯にのぼる被災者がこのタワーで避難生活をスタートさせました。

しかし、この人道支援はやがて長期にわたる深刻な対立へと姿を変えます。発端となったのは、国と福島県による自主避難者(国の避難指示区域外からの避難者)に対する住宅無償提供の終了(2017年3月末)でした。行政側は民間賃貸への転居補助金や公営住宅の優先枠といった経過措置を用意したものの、一部の住民は「放射線への不安が消えない」「経済的困窮により都内で民間の家賃を払えない」として自主退去を拒絶し、退去期限を過ぎても居住を継続しました。

事態が法廷闘争へと発展したのは2019年のことです。福島県は退去に応じない住民に対し、住宅の明け渡しと退去期限以降の家賃相当額(近傍同種の民間家賃基準、さらに契約違反に伴う倍額請求を含む)の支払いを求めて東京地方裁判所に提訴。いわゆる東雲住宅の原発避難者裁判(東雲住宅の明け渡し訴訟)の幕が切って落とされました。

法廷では「生活困窮者を路上に放り出すのか」「子どもの生活基盤を守る人権上の配慮が欠けている」と訴える避難者側と、「法に基づく支援期間は満了しており、税金で維持される国有財産の不法占拠は見過ごせない」とする行政側が鋭く対立。しかし、東京地裁、東京高裁ともに県の請求を全面的に認める判決を下し、最高裁判所も上告を棄却。住民側の敗訴と明け渡し命令が確定しました。

この東雲住宅の退去問題と真相を振り返ると、自然災害における緊急人道支援の枠組みと、法的な行政財産管理のルールの狭間で、明確な出口戦略を欠いたままスタートした制度設計の綻びが浮き彫りになった悲劇的な摩擦であったと言わざるを得ません。

佐藤 大輔
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佐藤 大輔

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