2012年、憧れの先輩であるイチローと同じユニフォームを着るため、川崎はメジャーリーグベースボール(MLB)シアトル・マリナーズへの移籍を決断する。マイナー契約からの過酷なスタートだったが、新婚の麻衣さんは見知らぬ異国の地へ迷わず帯同した。
特にトロント・ブルージェイズ時代、言葉の壁を越えたキャラクターで地元カナダのファンから爆発的な人気を獲得した裏で、日々の生活を支えていたのは妻の緻密なサポートだった。時差の激しい遠征、急なマイナー降格やロースターの入れ替えといった精神的重圧に晒される夫のため、栄養バランスを徹底した日本食を用意し、常に前向きな言葉をかけ続けた。
どれほどメディアに囲まれても、彼女自身が表舞台に出しゃばることは一切なかった。異国の地で孤軍奮闘する夫にとって、自宅のドアを開けた瞬間に広がる温かな日常こそが、戦い続けるための唯一のシェルターだった。