現地を定点取材して見えてきたのは、気象条件と時間帯がもたらす劇的な自然のドラマだ。車山一帯を黄金色に染め上げるニッコウキスゲの最盛期は例年7月上旬から中旬。緑の絨毯の上に鮮やかな黄色が一面に広がる景色は圧巻の一言に尽きる。だが、気候変動の影響で開花サイクルが前後することも珍しくないため、山麓と山頂付近の標高差による開花ズレを計算に入れた旅程設計が欠かせない。
一方、幻想的な雲海に出合える確率は、雨上がりの翌朝、湿度が極めて高く放射冷却が起きる早朝5時台から6時台がもっとも高い。眼下に広がる白濁した霧の海から、八ヶ岳や富士山が島のように頭を覗かせる瞬間は、まさに早起きした者だけに許された特権である。
この絶景をストレスなく堪能するための最大の障壁が、最盛期の午前中に発生する激しい交通渋滞だ。王道ルートである中央自動車道の諏訪ICから白樺湖を経由するラインは、午前8時を過ぎると駐車場待ちの列が数キロに及ぶ。現地ドライバーが推奨する混雑回避の裏ルートは、諏訪南ICを下車し、八ヶ岳エコーラインを経由して八島ヶ原湿原側から車山肩へとアプローチする迂回線だ。加えて、リフト運行前の早朝5時半までに現地駐車場を確保できれば、人影まばらな静寂の中で日の出と朝霧の共演を独占できる。