蕎麦屋といえば、さっと手繰って足早に店を出る「江戸前のファストフード」というイメージが根強かった。その固定観念を根底から打ち破ったのが、同店をプロデュースする株式会社フォンスである。代表の小林正憲氏が掲げたのは、ジャズが静かに流れるシックな空間で、旨い酒と肴をゆっくりと愉しみ、最後に手打ち蕎麦で締めるという贅沢な時間の提案だった。
伝統的な日本料理の美意識を土台に据えながら、現代的なダイニングの居心地の良さを融合させた試みは、外食産業全体に大きなインパクトを与えた。昼下がりのテラス席でワイングラスを傾ける観光客の姿は、軽井沢の新しい日常風景となったのである。洗練されたサービスと妥協のない味作りの両立こそが、世代を超えて熱狂的な支持を集める最大の理由だ。