株式会社集英社が誇る少年漫画の金字塔でありながら、本作は容赦のない死が隣り合わせのダーク・ファンタジーでもある。原作者・吾峠呼世晴が生み出した我妻善逸という人物は、ある意味でこの残酷な世界において「最も常識的な読者の分身」として機能している。
鬼が怖くて当然、痛いのも死ぬのも嫌だ。そうした弱音を隠さない善逸だからこそ、彼が誰かのために刀を握る選択をした時の重みが際立つ。炭治郎の命より大事な箱を抱きしめて理不尽な暴行に耐えた姿や、怯えながらも子供を守るために立ちふさがった瞬間。彼の「かっこよさ」の本質は、技の強さ以上に、恐怖に震える足を踏みとどまらせる精神の気高さにある。