鶴ヶ城を見上げた際、多くの来訪者の目を引くのが独特の赤褐色に輝く屋根瓦です。現在、日本国内の城郭天守で赤瓦を用いているのは鶴ヶ城のみであり、これは2011年の大規模改修工事によって幕末当時の姿へと忠実に復元されたものです。
なぜ一般的な黒瓦ではなく赤瓦が採用されたのか。その理由は、会津特有の厳冬期における「凍結割れ(凍害)」との闘いにありました。一般的な黒色の燻し瓦は吸水率が高く、内部に染み込んだ水分が氷点下10度を下回る厳冬期に凍結・膨張し、瓦が粉々に割れてしまう欠陥を抱えていました。
これに対し、藩命を受けた職人たちが鉄分を多く含む釉薬を施し、約1,200度以上の高温で焼き上げる釉薬瓦(赤瓦)を開発。表面がガラス質でコーティングされた赤瓦は吸水率が極めて低く、雪の重みや凍結に耐えうる驚異的な強度を獲得しました。戦乱だけでなく過酷な自然環境からも城を守り抜いた先人の科学的知恵が、白壁と調和する美しい赤瓦として現代に受け継がれています。