本作のバックグラウンドには、音楽ファンやカルチャー層を唸らせる数々の逸話が存在します。その最たるものが、劇伴音楽を手掛けた人物の存在です。映画全体のサウンドトラックを担当したのは、なんとアメリカの伝説的オルタナティヴ・ロックバンド、The Smashing Pumpkinsの元ギタリストであるジェームス・イハでした。
日本映画の小規模な青春作品に、世界的なトップミュージシャンがなぜ参加したのか。当時、山下敦弘監督の前作『リアリズムの宿』などを高く評価していた映画プロデューサー陣の熱烈なアプローチと、ジェームス・イハ自身の日本文化への関心が合致し、奇跡的なコラボレーションが実現しました。彼が提供したアコースティックでノスタルジックなギターインストゥルメンタルは、群馬ののどかな風景と見事に融和し、作品の詩的な深みを倍加させています。
さらに、劇中歌として使用されたTHE BLUE HEARTSの楽曲についても重要な裏話があります。当初は特定の有名曲に頼らないオリジナル楽曲や他の邦楽バンドの起用も検討されていましたが、脚本開発の過程で「世代を超えて誰もが口ずさめ、かつ素人が短期間で衝動的に演奏できる究極のロックンロール」としてTHE BLUE HEARTSが選出されました。
甲本ヒロトと真島昌利の許諾を得て劇中で鳴らされた楽曲群は、単なる懐古趣味ではなく、女子高生たちの不器用な自己解放のツールとして鮮やかに再定義されました。劇中バンド「パーランマウム」名義でリリースされたシングルCDは、当時インディーズチャートを賑わせるなど、映画の枠組みを超えた音楽的ムーブメントを生み出したのです。