産後に退院する際、手渡された母子手帳を見て「えっ、私の苦しみはこんな短かったの?」と驚く女性は少なくありません。SNSや育児コミュニティでも、この「体感時間と公的記録の落差」に関する戸惑いの声が頻繁に交わされています。
「陣痛アプリで痛みを我慢し始めてから丸2日、一睡もできずに病院へ駆け込んだのに、母子手帳の分娩時間欄には『8時間12分』と書かれていた。助産師さんに確認したら、最初の1日半は『間隔にバラつきがあったため前駆陣痛扱い』だったと言われ、脱力した」(30代初産・当事者手記より)
母子健康手帳に記載される分娩時間は、産院の助産師や産科医が胎児心拍数陣痛計(CTGモニター)の波形データや子宮口の開大進行度、規則的な周期性を客観的に照合して算出した公式記録です。本人が激しい痛みに耐えていたとしても、医学的に子宮収縮が周期化していなければ「分娩前」として除外されます。
さらに、分娩室でいきんでいる「分娩第2期」は、産婦にとっては1分が何時間にも感じられる極限状態ですが、時計の針で見れば1時間程度だったというケースも一般的です。逆に、痛みの逃し方が上手でリラックスできていた妊婦が「体感では5時間くらいだったけれど、記録上は13時間かかっていた」と振り返る例もあります。母子手帳の数値はあくまで「生体リズムが分娩モードに入っていた医学的計測値」であり、母親が耐え抜いた精神的・肉体的な苦闘の総量そのものではないという視点を持つことが大切です。