現場のリアルな光景を知る葬祭ディレクターへの取材や、大手Q&Aサイト、SNSに投稿された実体験談を検証すると、「自分だけ浮いてしまった」という後悔の声が数多く見受けられる。
都内のセレモニーホールで15年以上の勤務経験を持つ葬祭ディレクターは、次のように内情を証言する。
「焼香台に向かって歩く参列者の背中は、親族や他の会葬者から何分間も見つめられることになります。近年普及した式場の高演色LED照明は、布地のわずかなテカリやグレーがかった薄い黒をくっきりと照らし出します。『黒いスーツだから大丈夫』と参列された20代〜30代の方が、喪主様やご親族の漆黒の装いの中に立った瞬間、自分の服装が周囲と全く違うことに気づき、所在なげに肩を縮めておられる姿を何度も目にしてきました」
ネット上の掲示板や知恵袋でも、同様の告白が散見される。
「20代半ばのとき、会社の先輩の葬儀に手持ちのリクルートスーツで参列した。会場に入る前は真っ黒だと思っていたのに、並んだ瞬間、自分のスーツだけが明らかに白っぽくテカっていて血の気が引いた」
「親族の法要で『若いからビジネススーツでいいよ』と言われて言葉通りにしたら、親戚一同が完璧な漆黒の礼服で固めており、恥ずかしくて穴があったら入りたかった」
大手セレモニー関連団体の調査データ(2025年公表版)によると、葬儀参列時に「他人の身だしなみや服装マナーの乱れが気になったことがある」と回答した参列者は全体の63.8%に達している。口に出して注意されることは稀であるものの、周囲は無言のうちに観察し、礼節の度合いを測っているという実態が浮き彫りになっている。