一般的に「風俗」といえば性的サービスを連想しがちですが、日本語の本来の語源を紐解くと、まったく異なる意味を持っています。「風」は風土や土地の空気感、「俗」は人々のならわしや習俗を意味し、古代から中世においては「特定の地域や時代における人々の生活様式・慣習・道徳観」全般を指す言葉でした。民俗学や社会学で「明治時代の風俗」という表現が使われるのは、当時の衣食住や生活習慣を意味しているためです。
これが歓楽街や娯楽産業を指すようになったのは、明治から昭和にかけてのことです。大衆娯楽や夜の歓楽街が発展する過程で「風紀を乱す恐れのある営業」を取り締まる必要が生じ、行政や警察用語として「風俗営業」という枠組みが作られました。現代の日本の法体系において、風俗は「風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律(通称:風営法)」によって明確にカテゴリー分けされています。
風営法では、産業を大きく以下の2系統に分類しています。
- 風俗営業(法第2条第1項):キャバクラ、ホストクラブ、パチンコ店、ゲームセンター、麻雀店など、客に飲食や遊興を提供して楽しませる営業形態。
- 性風俗関連特殊営業(法第2条第6項):ソープランド、ファッションヘルス、デリバリーヘルスなど、性的なサービスやそれに付随する接触を伴う営業形態。
世間一般で「風俗」と呼ばれるものは、法的には後者の「性風俗関連特殊営業」に該当します。この営業は無制限に自由な開業が認められているわけではなく、青少年の健全育成や公序良俗の維持を目的として、営業可能な地域、営業時間、広告宣伝の方法に至るまで極めて厳しい法的制限が課されています。