姫路セントラルパークが放った一連の「自虐CM」は、日本の観光広告史に残る大逆転劇でした。「自虐CMの理由」をマーケティングの視点から紐解くと、地方テーマパークが直面していた厳しい現実と、巧妙に計算された心理誘導が見えてきます。
1984年に開業した同パークは、甲子園球場約48個分という広大な敷地を誇り、質の高いドライブスルーサファリと、世界的なコースター設計会社ボリガー&マビヤード(B&M)社が手掛けたインバーテッドコースター「ディアブロ」をはじめとする本格アトラクションを備えています。しかし、関西圏ではユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ)の台頭や京阪神からの物理的距離がネックとなり、「名前は知っているが足を運んだことがない」という潜在層を長年抱えていました。
そこで仕掛けられたのが、「人が来ない」「ガラガラ」「見どころが地味」と徹底して自虐するキャンペーンです。心理学における「ゲイン効果(落差による好印象の増幅)」を狙い、来園前のハードルを意図的に底まで下げることで、実際にゲートをくぐった来園者に「思っていたよりサファリの距離が長くて迫力が凄い」「絶叫マシンのクオリティがガチすぎる」という強烈なポジティブサプライズを生み出しました。現在ではその認知度が定着し、「自虐しているが中身は超本格派」という独自のブランディングを確立しています。