「空手から派生したのなら、実質的には空手の一派ではないのか?」という疑問を抱く人は少なくありません。しかし、現場の指導者や選手取材を行うと、返ってくるのは「運動理論と身体の使い方が180度異なる」という答えです。
最大の違いは「体軸(背骨を中心とする身体の垂直軸)」の扱いにあります。伝統派空手や極真空手では、重心を落とし、体軸を床に対して垂直に保つことが基本中の基本とされます。軸がブレると打撃の威力が逃げ、相手の反撃を受けた際に体勢を崩されるためです。一方、躰道はその真逆を行きます。体軸を意図的に倒し、斜めに傾け、捻ることで、重力加速度と遠心力を技のエネルギーへと変換します。「軸を維持する」空手に対し、「軸を変化させてパワーを生み出す」のが躰道なのです。
躰道のルールにおける最大の特徴は、公式試合(実戦競技)において「ただ当てるだけでは技のポイントにならない」という点にあります。体軸を変化させる基本動作(操体)を正しく踏み、相手の攻撃を体軸の傾きでかわしながら(運足・体変)、適切な間合いと気迫で胴体(首から下、帯から上)を捉え、直後に残心(構えの復元)を示さなければ一本や技ありとは認められません。この厳格な採点基準が、単なる喧嘩や泥仕合を防ぎ、高度に様式化された美しさを保つ防壁となっています。