鳥の羽ばたきには一体どんな秘密が隠されているのでしょうか。人間が人工の翼を腕に括り付けて羽ばたいても1ミリも浮き上がらないのに対し、スズメやカラスが軽々と飛び立てる背景には、決定的な解剖学的差異が存在します。
空を飛ぶための最大のエンジンが、胸元に位置する「大胸筋」と「烏口上筋(うこうじょうきん)」の連携です。人間の場合、大胸筋は腕を前で合わせる動作に使われますが、鳥類では鳥の胸筋と羽ばたき運動の真相として、この胸筋群が体重の約15〜25%を占めています。さらに驚異的なのが、翼を引き上げる仕組みです。背中に筋肉を配置すると重心がブレて飛行が不安定になるため、鳥類は胸にある烏口上筋から伸びた腱を、肩の骨(三骨間孔)に通して滑車のように反転させ、胸にいながらにして翼を引き上げる構造を獲得しました。
この筋肉が生み出すパワーを受け止めるのが、鳥の翼の構造と揚力の発生ロジックです。翼の断面は上面が丸く盛り上がり、下面が平ら、あるいはわずかに凹んだ「翼型(エアフォイル)」を形成しています。前方から気流を受けると、翼上面の空気の流れが下面より速くなり、ベルヌーイの定理とコアンダ効果によって翼の上面が吸い上げられるような低圧部が発生します。これが「揚力」です。
骨の内側がストローのように中空構造(含気骨)になっており、肺胞の奥に「気嚢(きのう)」という呼吸の送風機を張り巡らせることで、飛行中の激しい酸素消費を維持しています。これら極限まで無駄を削いだ肉体こそが、鳥が飛べる決定的な理由に他なりません。