ネット上の議論で散見されたのが、「ポゼッション率が65%を超えていたのに、なぜこれほど攻めあぐねたのか」「戦術が停滞していたのではないか」という批判的な声です。しかし、現代フットボールのアナリティクス視点から見ると、これは大きな誤解を含んでいます。
今回の相手のように、中央を完全に閉ざして自陣深くに籠城する相手に対してボール保持率が高くなるのは当然の帰結です。重要なのはボールを持っている時間ではなく、「どこで、どのようなスピードで動かしていたか」という点にあります。
前半の日本代表は、安全な自陣やハーフウェーライン付近での横パスが多く、相手のディフェンスラインを動かすリスクある縦パスが意図的にセーブされていました。これは敵地の劣悪なピッチコンディションと高温多湿な気候を踏まえ、前半をコントロールして相手の体力を消耗させるという、緻密なゲームマネジメントの一環でもあったのです。「攻めあぐねていた」のではなく、「相手の体力が落ちる後半勝負を見越した戦略的コントロール」であったという側面は、見落とされがちな盲点と言えます。