時計の針を1990年代初頭に戻す。当時、今井美樹と山下久美子はプライベートでも交流のある「親友」同士だった。山下は布袋寅泰の妻であり、今井は山下の良き相談相手。この構図がすべての悲劇の始まりとなる。
山下の紹介で布袋と出会った今井は、次第に彼の音楽的才能、そして人間的な魅力に惹かれていく。相談相手がいつしか当事者へとすり替わるプロセスは、あまりにも古典的で、それゆえに生々しい。山下久美子が後に執筆した自叙伝『ある日のこと』には、当時の生々しい葛藤と、信頼していた人間たちに裏切られていくプロセスが克明に綴られている。深夜、自宅に突然かかってくる今井からの電話。その不穏な気配に怯える山下の姿は、読者に強い衝撃を与えた。
結局、布袋と山下は1997年に離婚。そのわずか2年後の1999年、布袋と今井は入籍を発表する。このスピード婚こそが、「略奪」の動かぬ証拠として世間に決定づけられた瞬間だった。