「この虫刺され、マダニ?」と強い不安を抱く読者の多くは、すでに虫が脱落した後、あるいは吸血中の病巣を見て戸惑っています。臨床現場で記録されるマダニ刺された跡の画像には、一般的な蚊や毛虫の皮膚炎とは一線を画す明確な病理的サインが存在します。
通常の虫刺されであれば、刺咬直後から強い掻痒感とともに境界明瞭な膨疹(蚊刺過敏反応)が現れます。対してマダニの刺咬創は、中央に黒褐色の小さな「しこり」や「黒点」を伴う紅斑として観察されます。この黒点の正体は、現在進行形で吸血しているマダニ本体であるか、あるいは虫体が脱落・切断された際に皮膚内に置き去りにされた「咬頭(口器の一部)」です。
刺咬から数日を経てマダニが自然落下した場合でも、刺し口の周囲には数センチ規模の硬結(硬いしこり)が数週間から数カ月間にわたって残存する傾向があります。さらに後述する感染症の兆候として、刺し口を中心に赤褐色のかさぶた(エシャール)が形成されたり、紅斑が日を追うごとに同心円状に拡大していく現象が確認されます。