では、そもそも「パンをくわえて走る」という行為の発祥はどこにあるのでしょうか。漫画史を紐解くと、少女漫画よりもむしろ1960年代〜1970年代の少年漫画やギャグ作品にその原型が確認できます。
早くから確認されている描写としては、ちばてつや氏の『ハリスの旋風』(1965年連載開始)や、水島新司氏の『ドカベン』(1972年連載開始)などで、慌ただしい朝の情景描写として「食べ物を口にくわえたまま家を飛び出す」シーンが描かれていました。当時の高度経済成長期において、朝食の西洋化(米飯から食パンへ)が進み、トーストは「手軽でモダン、かつ忙しい現代人の朝」を象徴するアイテムとして定着していった背景があります。
少女漫画においても、忠津陽子氏の『トースト娘に乾杯!』(1971年)のようにタイトルにトーストを冠した作品や、朝の慌ただしさを描く日常描写は存在していました。しかし、そこに「運命の出会い(曲がり角での衝突)」がセットとして結びつくまでには、さらにいくつかの段階を要することになります。