建築の専門家のみならず一般層にまで本館の知名度が広がった起爆剤は、数々のテレビドラマや映画の撮影地として起用されてきた実績にあります。中でも圧倒的な反響を呼んだのが、2018年度後期のNHK連続テレビ小説『まんぷく』です。ヒロインの今井福子が通う高等女学校の校舎として登場し、気品あふれるクラシックな佇まいがお茶の間を魅了しました。
さらに、2016年度後期の朝ドラ『べっぴんさん』でも、主人公・坂東すみれたちが青春時代を過ごした名門女学校のロケ地として撮影陣に選ばれました。時代考証に極めて厳しい国営放送の美術スタッフが本館を熱望する理由は明白です。戦前の昭和初期に建てられた本物の建築が、改装で質感を損なうことなく、ほぼ創建当時の姿を保ったまま京都に現存しているからです。
映像ディレクターや美術関係者の証言によると、「CGでは決して再現できないスクラッチタイルの経年変化、アーチ窓から差し込む自然光の柔らかさ、そして磨き込まれた木製階段の重厚な軋み」が、役者の演技に本物の説得力を与えるのだといいます。