利便性の影で、絶対に軽視してはならない身体的・物理的リスクが存在します。それが、医療用電子機器や精密機器に対する静磁場の干渉問題です。
日本不整脈心電学会や主要な医療機器メーカーの公表データによると、心臓ペースメーカーや植込み型除細動器(ICD)は、外部から強い磁気を受けると安全機構が作動し、設定が一時的に「固定レートモード」に切り替わる、あるいは作動が抑制される仕様になっています。留め具に多用される小型ネオジム磁石は非常に強力であり、密着した状態では100ミリテスラ(1,000ガウス)以上の磁束密度を持つ製品も珍しくありません。医療機器ガイドラインでは、磁石を内蔵する製品を植込み部位から最低15cm以上離すよう明確に規定されています。
ネックレスの留め具は首の後ろに位置するため、胸元に機器を埋め込んでいる患者から距離があるように思われがちですが、脱着時や首回りを触る動作において数センチの至近距離まで接近する瞬間が生じます。そのため、ペースメーカー使用者本人やその同居人は、マグネット式アクセサリーの使用自体を避けるのが鉄則です。
また、日常生活における磁気ストライプカード(クレジットカードや通帳)、アナログ機械式腕時計との接触にも注意を要します。外したネックレスを無造作に財布やバッグのポケットへ一緒に放り込むと、磁気不良を引き起こしてカードが使用不能になるトラブルが実際に起きています。保管場所をアクセサリー専用ポーチに分離する配慮が必須です。
【プロの結論】おすすめできる人・慎重になるべき人の判断基準
マグネット留め具を導入すべきか否かは、身につける人のライフスタイルと対象アクセサリーの「資産的・感情的価値」によって明確に切り分けられます。
【導入を強くおすすめできる人】
・ネイルアートを施しており、自爪やスカルプを傷つけたくない人
・手指の関節痛や視力低下により、小さな引き輪の開閉に強いフラストレーションを感じている人
・紛失しても買い直しが利く、日常使いのファッションアクセサリーを中心に楽しんでいる人
・朝のコーディネートや身支度をとにかく短時間でスムーズに完結させたい人
【マグネット式の使用を避けるべき・慎重になるべき人】
・植込み型心臓ペースメーカーやICDを使用している本人、または濃厚に接触する家族がいる人
・祖母や親から譲り受けた形見、結婚記念品など、金銭に代えられない精神的価値を持つ一点物を着ける人
・チェーンの総重量が重い大粒パールや重量感のある天然石ペンダントを多用する人
・冬場にボリュームのあるマフラーを頻繁に巻き直す、あるいは重いリュックを日常的に背負う人
精神的な安心感を何よりも優先したい場合は、多少の着脱の手間を払ってでも従来型の頑丈なカニカンを選ぶか、前述の「差し込みロック併用型」を選択することが、最も後悔のない自己防衛策となります。