2023年2月12日、東京宝塚劇場で行われた『ディミトリ~曙光に散る、紫の花~』およびメガレビュー『JAGUAR BEAT-ジャガービート-』の千秋楽をもって、遥斗勇帆は宝塚歌劇団を卒業しました。研10という脂が乗り切った時期であり、星組の重鎮としてさらなる活躍が期待されていた最中の卒業発表は、ファンに大きな衝撃を与えました。
当時、インターネット上やSNSでは「劇団内の路線争いに見切りをつけたのではないか」「体調面や怪我のトラブルではないか」といった様々な憶測が飛び交いました。しかし、劇団関係者の証言や退団前後の本人のインタビュー、CS放送タカラヅカ・スカイ・ステージでのサヨナラインタビューの言葉を精査すると、そうしたネガティブな憶測とはまったく異なる実情が浮かび上がってきます。
遥斗勇帆が語った退団の核心は、「男役・遥斗勇帆として表現できる技術と魂を、納得のいく極限まで出し切った」という純粋な達成感でした。宝塚という限られたシステムの中では、学年が上がるにつれて組の管理業務や後輩指導といった役割の比重が増加します。彼女が選んだのは、形式的な役職に安住することではなく、自らの肉体と声帯をさらに広い世界の荒波に投じ、表現者としての新たな地平を切り拓くことでした。
実際、退団直後に長年の夢であった英国(イギリス)への渡航・留学へと舵を切った事実は、彼女の退団動機が「逃げ」ではなく「飽くなき向上心と探求の旅立ち」であったことを何よりも雄弁に物語っています。