福岡のうどんといえば博多の「やわうどん」や北九州の「資さんうどん」が全国区で語られがちですが、久留米市を中心とする筑後エリアや隣接する佐賀県東部において、生活に最も深く根差しているのが人力うどんです。運営母体は佐賀県鳥栖市に拠点を置く株式会社福山製麺所。昭和の時代から製麺業を営んできたプロ集団が直営する外食事業だからこそ、他社には決して真似できない強固なビジネスモデルが成立しています。
最大の特徴は、独自のブレンド小麦を用いて毎朝のように自社工場から届けられる麺の質感にあります。讃岐うどんのような強固な剛麺とは対極をなす、表面は滑らかでふんわりとしつつ、中心部に絶妙な粘り腰を残す「筑後うどん」の王道です。昆布、鰹節、鯖節、煮干し(いりこ)を贅沢に炊き出した黄金色のスメ(出汁)は、淡口醤油仕立てで塩分とアミノ酸の輪郭がはっきりと立ち、ひと口すするだけで乾いた喉と身体に染み渡ります。
現地を訪れると、午前11時の開店直後から作業着姿の現場ワーカー、長距離トラックのドライバー、近隣の高齢者夫婦が次々と吸い込まれていく光景が日常となっています。資材高騰が直撃する外食市場において、製麺所直営のスケールメリットを活かした驚異的な低価格設定を守り抜いている点こそ、地元民が「うどんを食べるなら人力」と即答する最大の原動力です。