大株になりすぎたシンビジュームは、植え替えと同時に「株分け」を行うことで若返りを図り、開花能力を再活性化させます。ただし、無計画に細かく分割すると翌年以降花が咲かなくなります。以下のプロの手順を厳格に順守してください。
作業に入る前の必須準備として、使用する剪定バサミやナイフは火炎滅菌(ライターの火で数秒炙る)または消毒用エタノール・第3リン酸ナトリウム水溶液で完全滅菌します。ラン科植物は「ウイルス病(シンビジュームモザイクウイルス等)」に感染しやすく、ハサミを介した感染は治療法が存在しないためです。
ステップ1:鉢からの引き抜きと根鉢の確認
鉢の側面を木槌や手のひらで軽く叩き、鉢と根の癒着を剥がします。根が回りすぎて抜けない場合は、無理に茎を引っ張らず、プラスチック鉢をハサミで切り開いて株を取り出します。
ステップ2:底部の根のカットと根腐れ部分の徹底整理
鉢底でグルグルに巻いた「根鉢の下部3分の1」を、清潔なハサミで水平にバッサリと切り落とします。その後、内部に入り込んだ古い用土をピンセットや手で優しくほぐし落とします。この際、黒褐色に変色してフカフカと中身のない腐った根や、中心の針金状の芯だけになった枯れ根を根元から完全に切除します。白〜クリーム色で硬く張りのある健全な根は可能な限り残します。
ステップ3:株分けの分割ライン決定(3バルブの原則)
株分けを行う場合の絶対条件は、「1つの新しい株に、葉のついた充実した生きたバルブ(偽球茎)を最低3個以上残すこと」です。新芽(リード)+前年の親バルブ+前々年の祖父バルブという3世代の連結を維持することで、新芽の成長に必要な養分が十分に供給されます。バルブ同士の結合部(リゾーム)の隙間に刃を入れ、手で左右に引き裂くように分割します。
ステップ4:バックバルブの処理と芽出しテクニック
葉が落ちて茶色くなった古い球茎(バックバルブ)は、株の栄養タンクとしての役割を終えている場合、株分け時に切り離します。しかし、このバックバルブを捨ててはいけません。健全なバックバルブを単体で湿らせた水苔に包み、半日陰の暖かい場所に置いておくことで、隠れていた潜伏芽が動き出し新たな苗を得る「バックバルブ芽出し」が可能です。
ステップ5:植え込み作業
鉢底に鉢底石または大粒の軽石を鉢の高さの5分の1程度入れます。株を中央に配置し、新芽が伸びるスペース(前側)を広めに空けます。バークと軽石の混合用土を隙間なく流し込み、割り箸や竹べらを使って根の隙間に用土をしっかりと充填します。バルブの基部が土に埋まりすぎないよう、「バルブの胴体が半分露出する深さ」で植え付けるのがプロの技です。