長年富士山の環境保全活動に携わってきたアルピニストの野口健氏をはじめとする登山家たちは、「富士山は観光地ではなく、過酷な自然そのものである」という原点を繰り返し訴え続けている。山小屋や売店が整備されているがゆえに、都市のテーマパークの延長線上で捉えてしまう心理的油断が、毎年のように重大事故を誘発しているからだ。
環境省が主導する入山者管理やマナー啓発は進むものの、弾丸登山禁止の網をすり抜けようとする軽装登山者や、登山道外への立ち入り、ゴミの放置問題は完全には消え去っていない。山を敬い、己の力量を客観視する謙虚さこそが、結果として生還率と登頂率を高める唯一のセーフティネットとなる。