福岡市海づり公園の閉鎖理由を語る上で避けて通れないのが、2020年9月に九州へ相次いで接近した大型台風(台風9号・10号)による壊滅的な台風被害です。玄界灘からの猛烈な高波と強風が直撃し、海上に張り巡らされていた釣台のグレーチング(格子状の足場鉄板)の広範囲な脱落、手すりの破損、さらには桟橋を支える基礎橋脚部分の損傷や電気・給排水設備の水没など、深刻な打撃を受けました。
被災直後、市が実施した詳細な健全度調査では、来園者の安全を確保した上で原状復帰させるための改修費用が数億円規模に達することが判明しました。ここで福岡市は重い財政的・構造的判断を迫られることになります。施設自体が1985年の開園から35年以上を経過しており、海水の塩害によるコンクリートや鋼材の経年劣化が著しく進行していたのです。
「単に税金を投じて被災前の状態に戻しても、近年の激甚化する気候変動下では数年後に再び大波で破壊されるリスクが極めて高い」。市議会の委員会審議や関係者の検証報告でも指摘されたこの構造的ジレンマこそが、即座の修繕工事に着手せず、施設全体の抜本的再編へと舵を切った最大の理由でした。