物語の序盤における二人の関係は、極めて打算的かつ歪なものでした。壬氏は類まれな美貌を武器に後宮の女性たちを掌握していましたが、猫猫だけは彼を「ナメクジを見るような目」で見つめ、一切なびきませんでした。自らの美貌が通用しない唯一の存在として猫猫に興味を抱いた壬氏と、面倒事に巻き込まれたくない一心で距離を置こうとする猫猫。この温度差こそが二人の原点です。
しかし、数々の難事件を共に解決する中で、薬屋のひとりごとにおける猫猫と壬氏の関係は単なる雇用主と薬師の枠を超えていきます。猫猫は壬氏の抱える孤独や重責を察し、壬氏は猫猫の卓越した知識と危うい探求心を誰よりも理解し守ろうとします。複雑に入り組んだ後宮の人間関係相関図の中でも、互いに唯一無二の理解者となっていくプロセスは、本作最大の醍醐味と言えます。