二人の出会いは1960年代初頭の日活撮影所でした。当時、芦川いづみは石原裕次郎や小林旭の相手役として年間十数本もの主演級映画をこなす押しも押されもせぬ日活のトップスターでした。対する藤竜也は日活第5期ニューフェイスとして入社したばかりで、セリフもわずかな下積みの大部屋俳優に過ぎませんでした。
6歳年上であり、雲の上の存在だった芦川いづみに対して、藤竜也は一目見た瞬間から強い憧れを抱いたと述懐しています。撮影所で言葉を交わすうちに、スクリーンで見せる可憐さの奥にある芯の強さと飾らない人柄に惹かれ、藤竜也からの熱烈なアプローチが始まりました。周囲の目を避けながら撮影所からの帰路を共にし、ドライブを重ねる中で愛を育んでいきました。
当時の芸能界において、トップ女優と売り出し中の若手俳優の交際は前代未聞の「格差愛」でした。映画会社幹部や周囲からの強い反対や懸念の声も上がりましたが、二人の決意は揺らぎませんでした。藤竜也は「この人を一生幸せにする男になる」と誓い、芦川いづみもまた名声や華やかな立場をあっさりと手放す覚悟を決めたのです。