白甘鯛を最高の一皿に仕立て上げる第一歩は、包丁を入れる前の下処理にあります。ここで最も犯しやすい過ちが、何も考えずにウロコ取り器で全身のウロコをバリバリと剥がしてしまう行為です。白甘鯛の最大の魅力である「松笠揚げ」や「鱗焼き」を作る場合、鱗こそが主役であり、鱗を傷つけずに残すことが必須条件となります。
白甘鯛下処理とウロコ取りの鉄則は、「用途に応じた部位ごとの剥ぎ分け」です。刺身や生食にするサクはすき引き(包丁で鱗の根元を薄く削ぎ落とす技法)で皮を残すか完全に皮を引きます。一方、焼き物や揚げ物用には鱗を完全に残し、包丁の刃先で表面の滑りや汚れだけを撫でるようにこそげ落とします。エラと内臓を抜いた後は、血合いを歯ブラシ等で徹底的に洗い流し、真水に触れる時間を1秒でも短くすることが生臭さを排除する絶対条件です。
さらに見逃せないのが白甘鯛の熟成期間と寝かせ方です。白甘鯛は水揚げ直後の「死後硬直期」よりも、適切な温度(0〜2℃)で2日から4日ほど寝かせた状態の方が、ATP(アデノシン三リン酸)が旨味成分であるイノシン酸へと分解され、芳醇な味わいへと進化します。内臓を抜いた腹腔内に吸水紙を詰め、高密着ラップで空気を完全に遮断してチルド室で保管する。この一手間が、家庭の料理を割烹の味へと昇華させる決定打となります。