楽天モバイルへの行政指導はなぜ繰り返された?理由と通信環境への影響を検証

楽天モバイルへの行政指導はなぜ繰り返された?理由と通信環境への影響を検証

楽天モバイルへの行政指導はなぜ繰り返された?理由と通信環境への影響を検証についての疑問解決ガイドをお届けします。

楽天モバイルがこれまでに総務省から受けた指導や要請の件数を紐解くと、参入準備段階から現在に至るまで分野別に累計7回以上の公的な是正指導・要請が重ねられてきた事実が分かります。その歴史は、既存3大キャリアが数十年間かけて築いたインフラを短期間で構築しようとした「無理と歪み」の記録でもありました。

第1の局面は、サービス開始前後の基地局整備の遅延です。2018年に周波数の割り当てを受けた楽天モバイルは、自前で基地局を展開する計画を掲げたものの、用地確保や工事の遅れから電波法に基づく開設計画の進捗が大幅に未達となりました。これに対し総務省は、2019年だけで3度にわたり整備計画の確実な履行を求める指導文書を交付。まさにスタート台に立つ段階から行政による強い監視下に置かれていました。

第2の局面は、本格サービス開始後に頻発した通信障害と緊急通報の接続不備です。同社は世界初となる完全仮想化ネットワークを標榜してコスト削減を図りましたが、ソフトウェアのバグやサーバの過負荷による大規模通信障害が断続的に発生。特に致命傷となったのが、警察(110番)や消防(119番)といった「生命に関わる緊急通報」への発信障害です。発信者番号の通知不良や接続遅延に対し、総務省は「国民の生命と身体の安全を脅かしかねない重大な事故」として厳重注意を行い、抜本的なネットワーク耐力強化を命じました。

第3の局面として見逃せないのが、社内統制を揺るがした巨額詐欺事件と不祥事です。同社元社員が基地局整備の下請け業者と共謀し、工事費用を約100億円規模で水増し請求させて着服していた詐欺容疑で逮捕される事件が発生。インフラの現場管理や調達プロセスの杜撰さが露呈し、通信品質のみならず企業としての信用基盤にも疑問符がつけられる事態となりました。

行政指導と「業務改善命令」の違いとは?

ニュースで「行政指導」と聞くと、事業停止などの重いペナルティを連想する読者も少なくありません。しかし法律上、行政指導と業務改善命令には明確な法的拘束力の違いが存在します。

行政指導は、行政手続法第2条第6号に基づく「相手方の任意の協力によって実現される指導・助言・勧告」であり、法的強制力や直接的な罰則はありません。一方の「業務改善命令」は、電気通信事業法第29条に基づく「法的拘束力を伴う行政処分」であり、これに違反した事業者には業務停止命令や高額の過料、極めて悪質な場合には事業免許の取り消しといった厳しい措置が下されます。楽天モバイルが今回受けた措置は行政指導(厳重注意および指導)の枠組みにとどまりますが、総務省から具体的な改善報告書の提出を義務付けられており、実質的な監視体制は極めて強固です。

山口 彩花
著者

山口 彩花

グルメと旅を愛するフリーライター。全国各地の隠れた魅力を独自の視点から紹介します。