「昼前に来ても、もうええ魚は残っとらんよ」
店先の氷を削り直しながら、ベテラン店員が苦笑いを浮かべる。観光バスが横付けされる午前11時から午後1時過ぎまでは、通路をすれ違うことすらままならない。人波に押され、吟味する間もなく目についたパックを手に取ることになる。
狙い目は明確だ。朝の競り落としを終えた鮮魚が各ブースへ一斉に運び込まれ、値札が打たれる「午前9時15分から10時前」。このわずか45分間こそが、品揃えの豊富さと鮮度のピークが重なる奇跡のウインドウだ。さらに言えば、店じまいが近づく午後3時半過ぎも面白い。売り切りたい店主たちとの駆け引きが始まり、思わぬ値引きや「おまけ」が飛び出す下町の青空市場のような泥臭い会話が交わされる。